【シースルーMRIとシースルーMRI室の違い】
略称によりシースルーMRIと呼ばれるものは、シースルーMRI室と何が違うのであろうか?結論から言えば、全く同じ意味である。というよりも、全く同じ意味で「習慣的に使われるようになった」というのが実情に近い。
シースルーMRI室(写真奥がMRI検査室)
シースルーのMRI検査室が開発された当初、日本では「シースルーMRI室」、海外では「Transparent MRI Room」という商品名としていた。その後、日本では、医療関係者の間で最後の一文字「室(しつ)」が徐々に省かれるようになり、略称シースルーMRIが多く使われるようになった。よく「MRI本体(ガントリー)がシースルーなのですか?」という質問も受けるのだが、上記の経緯がその答えとなる。
シースルーMRI/シースルーMRI室とは何かと言えば、電磁波シールドのシースルーテクノロジーであるEMPROOF技術を使っており、検査室の壁がシースルーになるという意味である(MRI装置自体がシースルーという意味ではない)。
【豆知識】
MRIの検査室は、全て電磁波シールドされている。MRI装置は電波と磁場を活用しており、電波のシールド(電波シールド)は必須であり、磁場のシールド(磁気シールド)は必要に応じオプションとして組み合わされる。この2種類のシールドを総合して電磁波シールドと呼び、このようなシールド機能を有している部屋は電磁波シールドルームあるいは電磁シールドルームとも呼ばれる。
MRI検査室の場合、前者の電波シールド機能は、検査室の内→外、外→内の双方向で必要であり、求められる仕様/性能は、メーカー・型式にもよるが、概ね100億分の1以下の減衰性能である。医療業界ではdB(デシベル)という常用対数による表示がよく使用され、この100億分の1の減衰性能は「100dB以上」と表記される。この「100dB」「100億分の1」という性能は、世の中一般のシールド性能から見れば、大変な高性能である。例えば、携帯電話/スマホは微弱な電波環境でも信号をキャッチできる非常に優れた通信機器とも言えるのだが、このクラスの電磁波シールドルーム(MRI検査室)の中においては、100dBの性能が確保できていれば、さすがに圏外となる。※強力磁場などによる危険を伴うため、決してマネしないでください。
MRI検査室の場合、後者の磁気シールドは必須の機能ではなく、必要に応じたオプションという位置付けである。この磁気シールドは、前述の電波シールドとはシールドの原理や使用素材が全く異なり、研究者レベルでも、電波シールドと磁気シールドの両方を専門とする専門家は、世界でもかなり少ないと思われる。本コラムではいずれ、磁気シールドについても興味深い小話などを随時紹介したいと考えている。
なお、「シースルーで、かつ、高性能な電磁波シールド」を達成するには、高度な技術が必要となる。技術の詳細については、コチラをご覧ください。