電磁波対策 相談 4」では、半導体の製造装置が溶接作業で発生する電磁波により不具合を生じた事例とその対策方法についてお伝えしました。手軽にできる方法として「溶接電流が流れる電線を撚る」「溶接棒とクランプの距離を縮める」などの対策方法をご紹介しました。今回のご相談も精密機器に関するもののようです。

 

Q電子顕微鏡を20台設置できる大型ショールームを計画しています。電子顕微鏡は微振動や微弱磁場の影響を受けやすいため、敷地選びから相談に乗っていただきたいと考えております。どんな手順で検討していけば良いでしょうか?また、電子顕微鏡を1台ずつ全てシールドルームに入れるとなると、シールドルームだけで莫大な予算となってしまいます。また、アクティブキャンセラーも20台を並べるとなると相互干渉がありそうで、あまり使いたくありません。もし、手軽にできる対策方法があれば教えて下さい。

※アクティブキャンセラーとは、コイルに電流を流すことで、逆位層の磁場を発生させ、磁気ノイズをキャンセルするシステムです。

予算を膨らませずに、電子顕微鏡の大型ショールームを作りたい

A:現在は敷地選びの段階とのこと。そうであれば、莫大な予算をかけずに対策する方法がありますので、ご安心ください。ここでは、微振動対策は脇に置いておき、電子顕微鏡が電磁波の影響を受けない環境構築のための手法に絞って、お答えしたいと思います。

電子顕微鏡は、「電磁波対策 相談 4」で取り上げられた半導体製造装置(電子ビーム描画装置)と同様、電子ビームを使用しています。従いまして、電子顕微鏡も磁気/磁場の影響を受けます。詳しくは「電磁波対策 相談 4」をお読みください。電子顕微鏡の場合は、例えば磁気ノイズの影響を受けると画像が歪みます。

対策としては、第1に候補地の環境測定を実施します。精密な磁束密度測定器を候補地の複数箇所へ設置し、例えば展示会場の営業時間帯に測定します。様々な磁気ノイズが測定されるはずですが、磁気ノイズが「電子顕微鏡のイミュニティレベル未満」の敷地を見付けることが大事です。

※上記イミュニティレベルとは、機器が耐えられる電磁波ノイズ(磁気ノイズ)の強さを示します。電子顕微鏡は精密機器ですので、一般に耐性が低く(イミュニティレベルが低く)、微弱なノイズでも影響を受ける傾向があります。

敷地選びの際は、候補地ごとに磁気環境測定を実施

第2に、その敷地周辺の計画情報を入念に確認します。例えば、隣接地に工場建設が予定されている場合、その製造内容の確認や、設備のレイアウト、大電流(磁気ノイズの原因となります)を使用する施設の有無など、様々な計画事項を確認します。サイエンスパークや工業地帯の場合は、敷地内に埋められている地下電力ケーブルのルートや将来的な電流値の予測情報なども確認が必要です。

第3に、ショールームの基本設計~詳細設計時において、電気設備からの磁気ノイズ対策を検討します。具体的には例えば、エレベータ(磁気ノイズの発生源となります)の位置や、電力ケーブルのルート(電子顕微鏡からなるべく離す)などを丹念に検討していきます。天井・床・壁の中の配線などは、プラスとマイナスの電線を撚りながら施工するよう、特記(指示書き)を入れておきます。

磁気ノイズを抑えるための屋内配線の処理

以上3つの対策により、シールドルームを一切設置しないで、電子顕微鏡のショールームを建設することが可能となります。既に実績のある方法ですが、どうしても心配な場合は、コンピュータを使った「数値解析技術」により屋内の磁気環境をシミュレートすることも可能です。

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